進撃の巨人・自由論

半分は哲学の解説ブログ、半分は作品の考察ブログ(最近は3:7くらい)。

目次

0 自由の哲学入門書として読む『進撃の巨人』 一覧 0.1 [バーリン、ミル] 0.2 積極的自由 (エレン)[バーリン] 0.3 積極的自由の光と影 (エレン、アルミン、エルヴィン、フロック)[バーリン、マキャヴェリ] 0.4 自由と「毒親」 (グリシャ、ジーク…

自由を望まずにはいられない人間であるために ~ 「進撃の巨人・自由論」結語にかえて (下)

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 「理解するのをあきらめない」こと もう一つの調査兵団スピリットがあります。 これは、とくにその団長に求められる「資質」でした。 すなわち、ハンジさんのいう「理解することをあきらめない姿勢」です(132話)。 132…

自由に値する人間であるために ~ 「進撃の巨人・自由論」結語にかえて (上)

マンガ『進撃の巨人』を自由の哲学で読み解いてみようという、誰が得するのかあまり分からない趣旨を、このブログは貫いてきました。 そんな自己満ブログですが、おかげさまで、思ったより多くの方に読んでもらえたようです。 読んでもらえること、そして反…

5.9.c 鳥になった少年 (下) 〜 自由になることと人間であること

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com エレンは「鳥の自由」をファルコに託した? 自由を奪う世界=自由を奪われた自分自身を超え出るため、エレンは身も心も悪魔になりおおせてしまったのか? そうではないということは、原作を完読した方々には明らかでしょ…

5.9.b 鳥になった少年 (中) 〜 自由になることと人間であること

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 進撃アニメ、やっぱり最終決戦はおあずけですって!? なにそれやだー(幼児退行)。 愚かしい自由からの解放 さて「顎」を継承したファルコですが、かれなぜか鳥のような姿になります(129話)。 ちょうど最近のアニメ放…

5.9.a 鳥になった少年 (上) 〜 自由になることと人間であること

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 人間的な、あまりに人間的な 哲学者たちは教えます。 人間らしく在ることと、自由であることは不可分だと。 ところが、哲学者たちは次のようにも教えます。 自分を自由だと思い込む者ですら、実は奴隷なのだと。 一体ど…

5.8.c なぜエレンは過去に干渉するか、または時間の「状況」化 (下) 〜 自由になることと人間であること

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 第一の疑問「なぜエレンの過去干渉は過去を改変しないか?」には前記事で答えました。 残る問題は、これです。 なぜエレンは、過去を改変することができないのに、過去をそうあったとおりに決定するためだけに過去に干渉…

5.8.b なぜエレンは過去に干渉するか、または時間の「状況」化 (中) 〜 自由になることと人間であること

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 第一に、なぜエレンの過去干渉は過去を改変しないのでしょうか? 第二に、それにもかかわらず、エレンが過去に干渉することには、いったいどんな意味があるのでしょうか? 第一の疑問を、ここでは解き明かしてみましょう…

5.8.a の註 なぜグリシャはロッド以外のレイス一族を殺したのか

註を別記事に移しました。本文はこちら。 unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com グリシャがフリーダから「始祖」を奪い、レイス一族を殺したとき、もしフリーダ以外の子供たちが生き残っていれば、かれらの誰かによって、エレンは「すんなり」喰われていただ…

5.8.a なぜエレンは過去に干渉するか、または時間の「状況」化 (上) 〜 自由になることと人間であること

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com うわーぜんぜん終わらんな、このブログ。 それでもまあ、3月中には書くべきことは書ききれるかと。 過去に干渉するエレン 未来予知の能力を得たエレンは、そのことによって必然性に支配されたわけではないということを、…

5.7.d 補論 ミカサの後日談は『めぞん一刻』を参考にすべきだった説

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 以下、またちょっとミカサのキャラ造形に文句を言ってしまいますので、苦手なかたはスルーしていただけましたら。 どうして墓場にマフラーをもっていった? 最後に話題にしたいのは、単行本で最後に加筆された一シーン。…

5.7.c 愛の等価交換、またはミカサと始祖ユミルの解放 (下) 〜 自由になることと人間であること

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com ミカサの現実逃避と「長い夢」 エレンとの最終決戦。 仲間たちが、もはやエレンを殺さずはにかれを阻止できないと覚悟を決めるなか、ミカサだけは動揺を隠すことができません。 それでもかのじょはどうにか、一度は始祖…

5.7.b 愛の等価交換、またはミカサと始祖ユミルの解放 (中) 〜 自由になることと人間であること

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 愛の等価交換の不成立 愛情の関係における自由――始祖ユミルが求めたもの、ミカサがエレンとの関係において到達すべきもの――とは、わたしの愛する行為とあなたの愛する行為との等価交換を成立させることです。 しかし、ミ…

5.7.a 愛の等価交換、またはミカサと始祖ユミルの解放 (上) 〜 自由になることと人間であること

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 本日のテーマはミカサの愛。 バレンタインデーにぴったりです。 ミカサにとってのエレンの二面性 ミカサが「主役より強いけど主役を引き立ててくれる」系ヒロインを脱却し、自由な実存になれるかどうかは、ミカサがエレ…

5.6 ミカサ奴隷説のメタ視点的考察 〜 自由になることと人間であること

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com ミカサは奴隷なのか 愛をつうじた解放への願い叶わず、永遠の奴隷となってしまった始祖ユミル(5.4を参照)。 かのじょは、最終回でのエレンの話によれば、ミカサの選択と行動を見ることによって救済されたのでした。 さ…

5.5.b なぜエレンは「未来の記憶」を見るか、または自己実現的予言 (下) 〜 自由になることと人間であること

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 自己実現的予言 自分自身の「未来の記憶」を予知し、未来の自分が意志することを目指して行動するエレン(ひょっとしたらグリシャも)。 このことは、自分を自由だと信じるエレンが、実は人知を超える大きな力によって操…

5.5.a なぜエレンは「未来の記憶」を見るか、または自己実現的予言 (上) 〜 自由になることと人間であること

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 予告と違いますが、ミカサの話に入る前に、エレンの考察を挟もうかと。 ええそうです。アニメに合わせようと思ってね。 ちなみに(上)は原作121話までしか扱っていないので、アニメ派の方も安心して読めますよ! すみま…

5.4.b 始祖ユミルの愛と隷従 (下) 〜 自由になることと人間であること

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 愛情の関係における自由 逃げることでも、男たちととも戦争に参加することでも、自由になれない奴隷ユミル。 そういうかたちでの解放は、つまり巨人の力をもって(超人間的な)戦士として認められることは、そもそもユミ…

5.4.a 始祖ユミルの愛と隷従 (上) 〜 自由になることと人間であること

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 始祖ユミルの苦しみと願望 生まれないことが奴隷の幸福であるという、呪詛のごとき信念から解放されたジーク。 でも、ついぞかれは、始祖ユミルが何を欲していたのか理解できませんでした。 それこそまさに、かれがエレ…

5.3.c 生まれないことが奴隷の幸福というジークの信念について (下) 〜 自由になることと人間であること

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 生まれたことを赦された反出生主義者 ジークが赦されるきっかけを与えたもの、かれが「苦しみの向こう側」を存在しうると教えたものは、二つあります。 第一に、記憶の旅において再会した、かつての毒親グリシャの言葉。…

5.3.b 生まれないことが奴隷の幸福というジークの信念について (中) 〜 自由になることと人間であること

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com おかげさまで、ハンジさんの記事がたくさん読まれているようです。 かのじょの人気の高さが分かります。 かくいうわたしも、イチオシのキャラはハンジさん(とジャン)でしてね。 ハンジ・ガチ勢に納得していただけたな…

5.3.a 生まれないことが奴隷の幸福というジークの信念について (上) 〜 自由になることと人間であること

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com よっしゃはじまったジョジョアニメ! もちろん『進撃』アニメ続きも普通に楽しみ。もうすぐね。 反出生主義? 裏返しの優生思想? いきなりなんですが、ちょっと過去記事の訂正をさせてください。 ジークについて、最初…

5.2.b 罪の奴隷となったハンジの自己解放 (下) 〜 自由になることと人間であること

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 正義は我にありと信じたいハンジ 王政との戦いに勝利し、壁と人類の真実を知るための道を切り拓いた、調査兵団とハンジさん。 シガンシナ区の決戦の結果、数多くの仲間とともに調査兵団長エルヴィンを失い、重責を感じつ…

5.2.a 罪の奴隷となったハンジの自己解放 (上) 〜 自由になることと人間であること

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 自分が自由だと思い込む奴隷 あけましておめでとうございます。 あとひと月くらいですが、よろしくお願いします。 それでは本題に。 哲学者のなかには、奴隷という言葉を使って、俗世の価値観を揺さぶろうとする人がよく…

5.1 「待っていたんだろ 二千年前から 誰かを」 ~ 自由になることと人間であること

自由でなければ人間ではない? こんにちは。 おふざけでエレヒスネタを投稿した前後から、妙にPV数が伸び出して、ちょっと色々な意味でビビっている小心者の筆者です。 そうはいっても、これが最終章。なにかあっても書き逃げすればいいもんね。 さて、けっ…

補論 エレヒス実在説に関する哲学的一考察

この記事はネタなので、あまり真に受けないでね! 序言 第4章がここまでヒストリア推しになってしまったのは予定外。 かのじょのエピソードは、書いているあいだの新たな発見が特に多くて。 第2章のエルヴィンもそうだったけど、それ以上ですね。 (筆者が好…

4.6.b 娘の父殺し (下) ~ わたしの内なる声としての自由

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 父殺しの物語 ついにヒストリアは「自分の使命」を「自分で見つけ」ました(68話)。 それは、ただお飾りの王位に就くことではなく、旧「壁の王」の体制と思想をみずからの手で否定し、新しい体制と時代の象徴としての王…

4.6.a 娘の父殺し (上) ~ わたしの内なる声としての自由

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com なぜヒストリアは女王になったか 王家の巨人を取り戻し、その身に「神」を宿せという、父親ロッド・レイスの要求を拒否したヒストリア。 「女性らしさ」とともに自己犠牲の美徳を受け入れてしまったと思いきや、実際のと…

4.5.c ヒストリアの鏡 (下) ユミルとフリーダ ~ わたしの内なる声としての自由

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com フリーダに同一化するヒストリア 幼少のヒストリアに強いられた「クリスタ・レンズ」という第二の人格。 それを規定していたのは、かのじょの異母姉フリーダによって無意識下に植え込まれた「いつも他人を思いやる優しい…

4.5.b ヒストリアの鏡 (中) フリーダと「女の子らしい」少女 ~ わたしの内なる声としての自由

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 「クリスタ」の鏡としてのフリーダ=始祖ユミル 精神分析の知見を借りつつ、自我の鏡像的形成という観点から、ヒストリアがユミルとの同一化をつうじて自己を解放する過程を、前記事で考察しました。 ひきつづき以下では…