進撃の巨人・自由論

半分は哲学の解説ブログ、半分は作品の考察ブログ(最近は3:7くらい)。

3 本来の自己を選ぶ自由

3.9.b 「余計者」の自由、またはライナーの救済 (下) ~ 本来の自己を選ぶ自由

「上」からどうぞ。 unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com ライナーの自己欺瞞 みずからの意味ある死によって、罪悪感を埋め合わせたい。 そのような願望を、エレンが「地鳴らし」を開始したあとも、いまだライナーは実現できずにいます。 ジャンに自分の罪深…

3.9.a 「余計者」の自由、またはライナーの救済 (上) ~ 本来の自己を選ぶ自由

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 世界の「余計者」としてのわたし 実存主義って、平凡な「普通の」人間の自由を照射するための哲学なんだよ、という話を長々としてきました。長すぎた感もありますが、これで最後にしますので、ご容赦を。 最後はこの人、…

3.8 神でも悪魔でもない「普通の」人間になること ~ 本来の自己を選ぶ自由

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 「神でも悪魔にでもなれる」人間 エルディア人を「悪魔」とさげすむ「普通の」マーレ人たち。 かれらは「悪魔」を虐げるふるまいをつうじて、みずからを「凡人のえり抜き」にします。 むしろそういう「普通の」マーレ人…

3.7 人種差別と「普通の」人間 ~ 本来の自己を選ぶ自由

『進撃』における人種差別 実存主義によれば、普通の人間のデフォルトは非本来性、すなわち、本来の自己を見失っている状態であるという話はしました(3.3)。 この非本来性という状態そのものは、善でも悪でもありません。 でもそれとは別に、本質的に邪悪…

3.6 所有と自己欺瞞 ~ 本来の自己を選ぶ自由

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 小市民的な自己欺瞞 あれ、なんだか作品考察ばかりになって、哲学解説ブログじゃなくなってきたぞ。そろそろ新しい哲学者も紹介しなければ。 というわけで、今回はストア派のエピクテトスが出てきます。 さて、実存主義…

3.5 試練としての本来性、またはコニーの「裏切り」 ~ 本来の自己を選ぶ自由

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com コニーの本来性 以前の記事(3.3 参照)では、コニーが「状況に流され」て調査兵団入りを選んだと指摘しました。 その後、かれが状況にどう対峙し、何を選びとったのかを、ここで考察してみましょう。 コニーにも実存的…

3.4 アニの自己欺瞞と本来性 ~ 本来の自己を選ぶ自由

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com アニの自己欺瞞 日常的な「普通の」人間のデフォルトは、非本来性である。 つまり非本来性それ自体には、善いも悪いもない。 ただし人間は、本来の自己を選んでいるようでいて、実は自分自身を騙しているにすぎないとい…

3.3 アニとコニー、または状況に「流される」こと ~ 本来の自己を選ぶ自由

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 本来性と非本来性 「ほんとうのわたし」を選ぶこととしての自由を、ジャンについて考察しました。 実存主義によれば、ほんとうのわたしとは、純粋に内面的な自己ではなく、むしろ「状況内存在」としての自己です。 特権…

3.2 「弱い人」としてのジャン ~ 本来の自己を選ぶ自由

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 「弱い人」でありつづけるジャン 前回は、ジャンが自由な「状況内存在」となったこと、すなわち「今何をすべきか」を知り、状況を自分自身の責任において引き受けたことを論じました。 みずからの痛み、みずからの弱さを…

3.1 「オレには今何をすべきかがわかるんだよ」 ~ 本来の自己を選ぶ自由

主演俳優として引きずり出される「その他大勢」 アルミンの実存的選択にかんする考察において、かれが自由になりうるかどうかは、ロマンティックな夢追い人としての自分自身に対する責任を引き受けられるかどうかに左右される、ということを論じました(2.7.…