進撃の巨人・自由論

半分は哲学の解説ブログ、半分は作品の考察ブログ(最近は3:7くらい)。

0 自由の哲学入門書として読む『進撃の巨人』

0.9.c わたしは他人とともに自由でありうるか (下) ~ 自由の哲学入門書として読む『進撃の巨人』

「上」「中」を先に読んでね! unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 調査兵団の自由 でも、ミカサ一人だけでは、エレンを止め、彼を解放することはできませんでした。 エレンが「地鳴らし」をはじめたとき、これを阻止す…

0.9.b わたしは他人とともに自由でありうるか (中) ~ 自由の哲学入門書として読む『進撃の巨人』

「上」から読んでね! unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 「君のどこが自由なのか」 おさらい。 エレンの「戦わなければ勝てない 戦え」は、彼が自分自身に立てた自由の掟。 敵が巨人から島外の人類へと変わった後も、エレンはこの掟を貫いた。 カント的意…

0.9.a わたしは他人とともに自由でありうるか (上) ~ 自由の哲学入門書として読む『進撃の巨人』

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 一応、いままで書いてきたのは「進撃の巨人・自由論」のたんなる導入部のつもりだったんですよ。長くなりすぎて、我ながら呆れます。 でも、今回が導入の最後です(分割するけど)。 わたしの自由と、他人の自由とは、つ…

0.8.b エレンに自由意志はあったのか (下) ~ 自由の哲学入門書として読む『進撃の巨人』

まず「上」から読んでね! unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com やっぱりエレンは「自由の奴隷」だった? 自由意志なんて白昼夢。必然性に従うことが自由。 自由になるためには、自由意志なんて「あげちゃってもいいさ」と考えるんだ。 まさにこのスピノザ流…

0.8.a エレンに自由意志はあったのか (上) ~ 自由の哲学入門書として読む『進撃の巨人』

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 星とかつけてもらって、ありがとうございます。励みになります。 今日、考えてみたいのは、わたしの行為の原因が外部にあるとすれば、わたしは自由ではないのか? ということ。 すなわち、決定論や必然論の問題です。 ス…

0.7.b 実存的自由の群像劇 (下) ~ 自由の哲学入門書として読む『進撃の巨人』

分割しました。「上」から読んでね! unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 「この世に生まれてきてしまったから」 エレンはファルコに言います。 みんな「何か」に背を押されて「地獄に足を突っ込む」。 だいたいの人は他人や環境に強いられてそうするのだが…

0.7.a 実存的自由の群像劇 (上) ~ 自由の哲学入門書として読む『進撃の巨人』

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 『進撃』の自由観の転換 あなた、 言いましたよね? 『進撃』世界の自由観は「積極的自由」なんだって。 エレンの「オレたちは生まれた時から自由」は『進撃』流の「人間賛歌ッ!!」なんだって。 そのはずが、舌の根もか…

0.6 実存的自由 ~ 自由の哲学入門書として読む『進撃の巨人』

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 『進撃』世界の人物たちは、干渉されない自由というよりも、積極的自由、すなわち自己決定の状態としての自由を求める。 自由でなければ、人間は人間らしく生きることができない。「家畜」や「鳥籠」の鳥と同然になって…

0.5 自由と優生思想 ~ 自由の哲学入門書として読む『進撃の巨人』

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com すみませんが今回も、自由のダークサイドの話です。これで最後なのでご勘弁を。 前回は、自由への渇望が、他人の自由をものともせず圧殺するパターナリスト=「毒親」を生み出しうるという話でした。 しかし自由を求める…

0.4 自由と「毒親」 ~ 自由の哲学入門書として読む『進撃の巨人』

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 前記事はこんな話でした。 壁内人類を脅かす巨人たちは、自由と相克する「運命」の象徴。 運命にあらがう自由は、マキャベリストの自由。マキャヴェリにとって、自由は善悪に優先する。マキャベリズムとは、人間らしく自…

0.3 積極的自由の光と影 ~ 自由の哲学入門書として読む『進撃の巨人』

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 積極的自由の光と影 干渉されずに自己決定できる「権利」としての消極的自由にたいして、積極的自由とは、自己決定の「状態」に達することであり、そこには自由が人間を人間的たらしめる理想的な状態であるという含意も…

0.2 積極的自由 ~ 自由の哲学入門書として読む『進撃の巨人』

unfreiefreiheit-aot.hatenablog.com 積極的自由 『進撃の巨人』のテーマである「自由」について、前記事では、だいたいこんな風に論じました。 それは個を尊重する自由だが、かといって、わたしたちになじみ深い私的・消極的な自由(干渉されない・束縛され…

0.1 自由の哲学入門書として読む『進撃の巨人』

自由の物語 マンガ『進撃の巨人』が4月に完結しました。 で、みなさん、あのキャラがああなった、こうなったとか、結末がよかったとか、期待外れとか、そういう感想ばかり言いあっています。 ちょっとした作品批評を含んだ記事を見ても、なんだか浅いコメン…